あえて低機能なIaaSを選び、クラウドポートフォリオを構成する
実は好きです、ローテクの世界
もともと前職で先進技術部門にいたという話をすると、「新しいものって楽しいですよね!」という話に花が咲いたりします。実際、やっぱり新しモノ好きっていう本性は抑えきれないものがあります。
一方で、新しいもの特有の難しさというか、それが銀の弾丸にはなり得ないことを思い知ったためか、「ローテクの良さ」というのもよくわかるようになりました。
最近は、わりとJavaに回帰しはじめているかもしれません。rubyやscalaなどにも手を出しているのですが、便利な反面、デメリットなども気になったりしますし、単純に自分自身に許された時間とお金と記憶領域が有限であることから「あれもこれも出来ない」というのもあるかもしれません。
ただ、ローテクなものや、制約があるものにも、「それなりの良さ」があるんだなって実感することは最近特に増えました。
あえてVPSではなく、単機能レンサバ
そんな頭があったからか、社内システムの一部をクラウド(IaaS)にいろんなシステムを移行することになった際に、ポートフォリオを組むというアプローチを取りました。
本当は1つの大きな「自由度が高いVPS」を借りてしまって、そこにDNSやらメールやらWebやら突っ込んじゃう手もあったのですが、どうもその気になれなかったのですね。
そこでやったことが、社内システムの「サブシステム毎の特性の違いのとりまとめ」です。
もともと、1つの社内ネットワークにさまざまな種類のサブシステムがぶらさがっていたわけですが、それらの特性の違いを棚卸ししたわけです。
特に結合度が低くてクリティカル度が高いサービスとしては、メール・DNS・会社のWebがあがりました。
これらに関しては、今流行のVPSではなく、あえて「sshログインすらできない、昔ながらのレンサバサービス」にしました。
いろんなことができてしまう自由がある ということは いろんなことが起きてしまう ということ
複雑なVPSの方が、不幸な事故の確率も少しは高いでしょうし、マルチテナントによる影響もより大きいでしょう。メールやDNSなんていうものは、枯れに枯れた技術のほうが良いと思ったのです。
IaaS選びにもポートフォリオを
その他、社内システムに関しては、情報の機密度やら個人情報を含むかなどで検討しました。研究開発&実験用は、むしろ自由にあれこれやりたいため、自由度最強なVPSサービスなどを契約しています。
資産運用などでは「安全だが値上がりしない銘柄」と「値上がり期待はあるが値下がりリスクもある銘柄」を組み合わせて運用するポートフォリオが組まれます。
それは投資という行為が、「自分の思い通りにならない可能性がある・委ねる行為」だからだとすれば、
基盤を他社に預けるIaaSというのもある程度似た側面があり、ポートフォリオは有効なのかもと考えました。
結局、4種類の特性が違うIaaSサービスを組み合わせてポートフォリオを組んで利用しています。
分散すると運用管理が少し大変ですが、低機能(単機能)のクラウドはメンテの手間も小さいので、今のところあまり困っていません。今後API等で自動構成がさらに可能になっていけば、分散運用の手間はさらに小さくなっていくんではないかと期待しています。
「既にやってるよ」「うちはもっと複雑だからポートフォリオなんて組めないよ」という方もいらっしゃるかと思いますが、お役にたてば幸いです。