一生エンジニアであり続けるためのもう1つの方法
エンジニアをやりたい
「エンジニアという職業ほど、楽しくやり甲斐がある仕事はない」
そう感じて仕事と向き合っている現場の人、エンジニアという職業に誇りを持つ人が増えてきたように思います。
- 理論的創造性が発揮できる
- 程よいチーム活動の充実感が得られる
- 自分の成長にあわせて仕事の内容も成長させられる幅がある
など、有意義な職業であることには違いありません。
私の場合、主にITエンジニア(プログラマやSE)を主にイメージしていますが、自動車製造などのエンジニアも同様ではないでしょうか。
一生エンジニアをやりたい
加えて、「エンジニアを極めたい、一生エンジニアでありつづけたい」と願う声も耳にするようになりました。
このような願いを真面目に抱く方の気持ちは、重く扱われるべきものだと思います。周囲はこのような想いを支え、手を差し伸べてあげたいものです。
しかしこの一言は、想像以上に「重い願い」であることもまた事実です。
「一生○○でありたい」という願いは、「不確定な未来における、継続的な自分の状態の確定願望」です。
これは、実は「一生お金に困らずに暮らしたい」とある種似ている側面があります。願うのも挑むのも自由ですが、社会や経済市場がそれを継続的に許すかはまた別問題であるという現実があります。
ありきたりな会社員だと、「一生」できるかはわからない
被雇用者という立場だと、どうしても自分のやりたいことと会社がやらなければならないことが乖離することがあります。一般的な会社の存在の根源的意味である「会社の目的」が利益の創出などにあるから、ある意味仕方ないことかもしれません。会社の目的やビジョンに「○○氏が一生エンジニアであることを実現するため」という記載があるわけではない限り、なかなか自分の一存で自分の仕事を規定することができないこともあるでしょう。
よって、仮に今は乖離していなくても、本人が望むと望まざるとに関わらず、将来的にエンジニアリングから離れた仕事を担当せねばならなくなることもあるかもしれません。
「本当はエンジニアがやりたいのだけれども管理職になってしまった」という人もたくさんいらっしゃいます。
一定の収入が約束される代償として、業務命令に沿った活動が必要
なお、高い収入が安定的に約束されやすい環境(企業)ほど、(価値があるかは別として)価格が低い仕事を外部委託することで内製労働力の粗利率を引き上げる戦略が必要になるなどの理由で、プログラミングについては外注されやすい(=自分が携われなくなってしまう)可能性が上がるように思います。
一般的に選ばれやすい方法:継続的転職
「一生エンジニア」を実現するための方法として、継続的に転職を行うという方法を選択される方もいらっしゃいます。つまり、
- 企業内で「やりたいこと」を表明する
- やりたいことが割り当てられた場合、その仕事を行う
- 割り当てられなかった場合、転職する
を繰り返すという方法で、「一生エンジニア」であり続けることを実現します。
「転職」というかなりインパクトの大きなリスクを引き受けるという意味で、この方法を選択する方の想いは本物でしょう。
この方法は、「他社からの需要」を材料とした交渉を企業と繰り返すことに他ならず、つまり、自分の交渉能力が弱まると成立しなくなります。このことから導かれる注意点は2つあると思います。
- 一生にわたり、継続的に高い(第一線の)成果を出す腕を持ち続ける必要がある
- 上記の「腕」というものは、市場が要求するものであって、単なる「技術力」とは対応しないことがある
例えば「8086マシン語をバイナリエディタで直接記述してプログラミングできる」という高い技術力を持っていたとしても、それが「他社から需要がある」ものでないならば交渉材料にはなりません。
また、単なる「技術的意識の高さ」や「参画的活動成果(○○勉強会によく参加しています)」だけだと、匠を求めるような企業は評価しない可能性があります。評価企業の水準が高い場合、前記のようなものはプロフェッショナルとして持っていてあたりまえとし、その意識や活動を通して自分としての固有の開発物や成果などをどのように生み出したかという評価の仕方をする方が、自然に思えます。
これを一生繰り返していくという方法は、なかなか簡単ではないことは想像できます。
しかし、今すぐ全力で「一生エンジニア」をはじめられる魅力的な方法であることに違いはありません。
もう一つの方法:自分でやる
もう一つの方法は「自分でやる」という方法です。起業というほど大げさなものではなく、個人事業主でも構いませんし、20万円(=登記印紙代+α)あれば誰でも法人を作って今すぐ社長になれます。
当然、自分の仕事の内容を、一生、100%自分が決定することができます。
この方式のリスクは、なんと言っても収益が不安定化するというリスクです。
もし自分に腕(=市場要求に対応する価値を提供する能力)がなければ、晩ご飯の品数が露骨に減っていきます。
ただし、「多少市場のニーズとはズレていても、やりたいことを自由にやれる」という点は、他にはないメリットです。
- 「おかずの品数は多少減っても構わないから、やりたいことをやりたい」という人
- 「オレの腕であればおかずの品数は減らない」という自信がある人
上記のような人にはうってつけではないでしょうか。
実はオススメ「自分でやる」
「自分でやる」という方法を敬遠されるかたが意外に多いことに驚きます。確かに、この方法を選ぶと「継続的転職」と異なって、事業が軌道にのるまで一時的にエンジニア以外の仕事が増えます(一時的にやりたいことから遠ざかる時間帯がある)。
他にも、いろいろ理由はあるようなのですが、結構誤解されている部分もあるようです。
悩: 「自分でやる」と経理とか他のこともやらなきゃいけない
会計士や記帳代行に依頼することができます。最近は結構競争も激しいらしく、びっくりするぐらいのおとくな値段です。
自分でやるのも勉強になるためオススメです。「面倒」ではありますが「難しく」はありません。仕事の内容にもよりますが、自分1人の会社の場合、大した量にはなりません。Haskellを学ぶのの1/100ぐらいの労力でマスターできます。楽しくはありませんが。
悩: 「自分でやる」と営業とか他のこともやらなきゃいけない
その通りなのですが、それは「継続的転職」も同じのように私には見えます。継続的転職の場合も、「自分を必要とするもっと条件のよい他社」に対して常に自分という商品をアピールしつづける必要があるため、実質的な営業に見えるのです。
数年に一度、人生(家族の人生を含む)をかけた営業交渉を繰り返す必要がないので、ある意味安定的かもしれません。
悩: 潰れるリスクがある
その通りなのですが、会社だって潰れる(リストラにあう)可能性はあります。会社の平均寿命は20年を割っているので、多くの人が「定年まで今の会社にいられない」ことになります。
潰れるリスクがありますが、自分に腕さえあれば、そのリスクをコントロールすることができるのもまた「自分でやる」メリットです。
それに意外と知られていませんが、極めて小さなPG開発会社(特に1人会社)は非常に潰れにくいという特性があります。借入の返済や給与支払額が小さいかつ制御可能なため、そうそう潰れないのです。会社は中途半端に大きくなった時に潰れます。
悩: 朝から晩まで大好きなプログラミングできない
確かに、プログラミング以外の仕事も増えるかもしれませんので、会社員に比べれば「プログラミングに傾注できる時間」は限定されるかもしれません。また、事業が軌道に乗るまでは、収益のために「好きなこと以外」もやらなければならない可能性もあるため、プログラミングの時間はさらに制約されることもあるでしょう。
しかし、軌道に乗れば、どんどん自分の自由な時間は増えていくのが「自分でやる」メリットです。それまであくまで一時的に「好きな開発の作業比率を制限される」という考え、頑張るのです。
悩: 軌道に乗るかわからないじゃないか
「継続的転職」も望みの転職できるかわかりません。
キーポイントは「等価交換」
この記事では「一生エンジニア」でいるために、
- 継続的転職
- 自分でやる
の2つの方法を紹介し、特に意外と敬遠されている後者をオシて紹介してみました。
いずれにせよ、
「自分が一生エンジニアであるために、どこまで"等価交換"を行う覚悟があるのか」
がカギかもしれません。
どちらの方法であれ、等価交換する対象は「リスク」でしょう。
そのリスクを引き受け、自分の力でコントロールし、継続的に改善し、自分の望むような未来を実現していくという覚悟と自分に対する信念。
これらが本物ならば、どちらの方法を用いても何らかの形で「一生エンジニア」を実現することはできます。